鉄道で旅をする時、楽しみのひとつがご当地の駅弁だ。浜松駅ではうなぎ弁当が売られ、今も人気を博している。
もうひとつ浜松駅で人気であったのが、ハーモニカ娘だ。戦後間もない昭和24年、日本楽器(ヤマハ)が駅売りを始めた。東海道線の急行列車の停車時間に、駅弁の売り子とともにホームに立った。衣装は上下ピンクの制服であったという。
一番売れたのがメダル・ハーモニカという商品で、当時、定価が60円。四穴で1オクターブの音が出るから、簡単な曲であれば演奏が可能。大きさは長さが3・8㌢で、現在もキオスクなどでお土産として売られている。
一回の停車で売り子一人につき30個ほど売れたという。浜松の楽器産業のPRに大いに貢献したということだ。現在はクローム仕様で、1,000円くらいの値段からある。
戦後、浜松の楽器生産額の約四割はハーモニカであったという時代である。裕福な家にはピアノがあったかもしれないが、一般家庭にあった楽器といえばハーモニカか木琴くらいであった。
ヤマハのロゴマークは三本の音叉(おんさ)であるが、この当時のハーモニカは「蝶」印であった。
ちなみに浜松の自笑亭をモデルとした映画『喜劇 駅前弁当』に、ハーモニカ娘が登場する。その隣でうなぎ弁当を売っているのが歌手の坂本 九だ。ちなみに、うなぎ弁当の値段が160円となっている。