餃子の町といえば、以前は群馬県宇都宮の専売特許であった。B級グルメがブームとなり、これを機に浜松餃子もブランド化を目指してきた。実はブームになる前から、浜松では当たり前のように餃子が食べられていた。
浜松餃子学会によれば、浜松餃子の定義は「餃子を円形に並べてフライパンで焼き上げ、真ん中にモヤシを添えること。具のキャベツの量が多い」ことだそう。総務省の家計調査で餃子の消費金額を見ると、浜松は宇都宮とともに断然高い。しかも餃子専門店の数では宇都
宮よりも多い。さらに他の都市と違うところは、生餃子の持ち帰り専門店もたくさんあるこ
とだ。
なぜ浜松が餃子なのか。この説にはいくつかある。そのひとつは、かつての軍都・浜松には軍の基地があって、旧満州からの復員兵が屋台で本場仕込みの餃子を売っていたというもの。しかし、浜松にあった歩兵第六十七連隊は青島(チンタオ)の攻撃には参加しているが、旧満州には進軍していない。旧・満州からの引揚げ者が始めたというほうが正しいであろうか。
ちなみに餃子は中国料理に入るが、旧満州などの東北部で消費量が多いという。それも焼き餃子よりも水餃子が主流であるようだ。酒もこの地方の人たちは、上海など南方の人たちより格段に強いというのが定説だそう。
五月の連休に開催される浜松まつり、昼は中田島砂丘をバックに勇壮な凧揚げ合戦が行われる。各町内の陣屋では、大人も子どもも餃子を食べている。浜松の家庭では、ご飯の副食として餃子が用意されることもしばしば。持帰り餃子店が多いのもそのためだ。
もう一つの理由として考えられるのは、浜松はファスト・フードがよく売れるということである。人口規模の同じような都市と比較すると持ち家比率が高い。マイホームを取得するために共働きのケースが多い。調理済みの餃子は電子レンジで温めればそのまま食卓に用意できる。風が吹けば桶屋が儲かるというような論法であるが、どうであろうか。